Vietnamese crab export

ベトナムのフォーの物語

フォー 麺 スープ ベトナム 観光

第01章 —

ふらりと訪れる旅行者にとって、ナムディン省は目立たない存在かもしれません。紅河デルタに位置するナムディンは、農村地帯や美しい教会で知られています。13世紀に侵攻してきたモンゴル軍を打ち破った国民的英雄、チャン・フン・ダオ(陳興道)もこの地の出身です。しかし、ナムディンがベトナムにもたらした最も重大な貢献は、牛肉の麺料理であるフォー・ボー(phở bò)です。

伝説や神話の存在により、ベトナムの多くの歴史は多彩な色合いを帯びています。ベトナムで最も有名な料理であり、最も成功した食の輸出料理でもあるフォーについても同様です。首都ハノイでは、フォーは定番の朝食メニューです。

早朝から、歩道沿いにはフォーの屋台が開店します。立ち上る湯気に包まれながら、料理人は注文を受けてから一杯ずつ仕上げていきます。柔らかい米麺とスライスした肉の上に熱々のスープが注がれ、刻んだハーブやアサツキがひと掴み載せられます。食べる人はそれぞれ、レモンを絞ったり、赤唐辛子のスライス、バジルの葉、海鮮ジャン(ホイシンソース)を少量加えたりして、自分好みの味に整えます。これこそ、ベトナム旅行では決して外せない体験です。

ナムディンがフォーの発祥の地と考えられている一方で、その精神的な故郷がハノイであることに異論を唱える人はほとんどいません。フォーが広く普及したのは、ハノイにおいて歴史的・文化的要因が結びついたからでした。

フォーの歴史は、フランスによる植民地支配が最盛期を迎えた19世紀末に始まります。フランス人の需要によりベトナムで牛肉が手に入りやすくなり、それに伴い大量の牛骨が余るようになりました。これを中国系やベトナム系の屋台商が利用し、ナムディンのスープの味わいを深め、完成させていったのです。

年月を経て、フォーはハノイで確固たる人気を得ていきました。もともとはサオ・チャウ(xáo trâu)--と呼ばれる、スープとライスバーミセリで水牛肉のスライスを煮込んだシンプルな料理から、繊細で調和の取れた一品へと進化を遂げました。水牛肉は牛肉へと代わり、平打ちの米麺が加えられ、スープの味が洗練されることで、伝統的なハノイのフォーが完成したのです。

中国の雲南省や広東省からの出稼ぎ労働者は、故郷の料理との類似性からこの新しい料理を大変気に入りました。牛肉の味に親しむようになったベトナムの人々も、同様に魅了されました。1930年代までには、天秤棒で移動式厨房を担いだ移動屋台ガン・フォー(gánh phở)が、旧市街の街角でおなじみの光景となりました。

それ以来、フォーは国民の心と深く結びついています。詩人のトゥー・モーは詩「フォー賛歌」の中で、スープの繊細な味わいと、富裕層にも貧困層にも愛されるその平等性を称えました。

ベトナムという国そのものと同様に、フォーもまた大きな変化を経てきました。貧しい時代の物資不足により、具の少ないフォーが街に出回ることもありました。最も決定的な変化が起きたのは、1954年の南北分断に伴い、数百万人の北部の人々とともにフォーが南部へと渡った時でした。

豊かな南部の地で制約から解き放たれた料理人たちは、スープに甘みを加え、様々なハーブのほか海鮮ジャンやチリソースなどを添えるようになりました。この「スープ対決」は今日まで続いています。主な違いは、南部スタイルの豊富なトッピングにあります。フォーのこだわり派は、よりシンプルなハノイのフォーこそ至高だと信じて疑いませんが、どちらのバージョンも絶品です。

ベトナムで最高のフォーがどこにあるかをめぐって議論は尽きませんが、初期の頃からこの料理がそれほど劇的に変化したわけではないとも言えます。様々な部位の肉が使われるようになり、客はレア牛肉(tái)、バラ肉(nạm)、胸肉(gầu)、ハチノス(sách)、アキレス腱(gan)、肉団子(bò viên)など、多彩な牛肉の部位から選ぶことができます。1939年に鶏肉のフォー(phở gà)が誕生した際には一時波紋を呼びました。しかし、全体としてフォーは本来の伝統を忠実に守り続けています。

とは言え、フォーは決して変化しない料理ではありません。ベトナムの若手シェフの中には、玄米の麺や生フォーのロール(フォー・クオン)といった新しいメニューを試みている人もいます。2018年には、Anan Saigonがトリュフオイル、和牛、フォアグラを使用した100ドルのフォーを提供して話題となりました。また海外では、シェフたちがアメリカザリガニや真空調理した牛肉を加えるなど、さらに独創的なフォーを生み出しています。

今日では、じっくり煮込んだスープを作るために、牛骨、フランクステーキ、オックステール、焼き玉ねぎ、焼き生姜、そして八角、シナモン、クローブ、ブラックカルダモン、コリアンダーなどのスパイスが使用されています。鶏肉のフォーも、オリジナルの牛肉フォーに劣らず人気があります。北部ではトッピングが生唐辛子のスライス、レモン、少々のハーブに限られますが、南部ではフォーの味が明らかに甘めで、選択肢も非常に豊富です。ベトナム中部では、ポーチドエッグが入ったフォーも見られます。

世界を代表する伝統的な麺料理の一つとして、フォーはその名声にふさわしい評価を十分に獲得しています。

おすすめのお店:

ハノイのフォー: Pho Thin(ハノイ市ハイバーチュン区ローダック通り13番地)

ホーチミンのフォー: Pho Minh(ホーチミン市1区パストゥール通り63/6番地)